攻略記事

トップランディング(アーケード)

思い出

 中学生時代、よく出入りした隣町のゲームセンターに長期的に設置されていたタイトルでして、正直、私を含めた仲間内でも気になる存在ではありませんでた。…というか、外見が『飛行機』のイメージには繋がらず、搭乗型ゲームという認識もありませんでしたので、子供に向けた遊具だと思っていたのです。唯一気になったところと言えば、この機種の外には内部とリンクするモニターがあるのですが、それが『空を飛んでいる光景』とも繋がらなかったため(内容を理解していれば目線はかなり変わっていたハズ)、『子供向けの遊具にしては、随分と見た目の楽しさとはかけ離れているなぁ』なんて事さえ考えたほどでした。

 そんなトップランディングをプレイする日は唐突に訪れました。

 仲間内でワイワイと騒ぐうち、どんな流れでそうなったのかも覚えていませんが、何らかの罰ゲーム感覚で友人の一人がこのゲームをプレイする事になったのです。
 とはいえ、私たちの認識はあくまで『子供向け遊具』。恥ずかしがる友人を中に押し込めるために別の友人が扉を開くと…なんだか薄暗いその筺体内部に対し、『とりあえずは子供向けではなかった』という認識だけが芽生えました。
 一方で、押し込まれた友人も内部に閉じ込められる(?)と様子が一変、妙に大人しくなり、内部の動きこそ分からないものの、外部モニターをみんなで眺めていると映し出されている画面に変化が…。


 この時点でみんなが『あれ?』と声を上げました。ひとまずもう始まっているようですが、それにしても本格的というか…。

 で、次に出た画面がこれ。


『離陸準備OK!』の文字で前方の景色が滑走路だという事に気付き、全員で理解。飛行機なんだなぁって。

 このまま思い出を続けると、きっと読み手が気疲れしてしまう事請け合いなので95%ほどバッサリカットしまして、内容に移ります。

 このトップランディング、早い話が後に大ヒットした『電車でGO!』の飛行機版と言えば良いのでしょうか、そんな感じで操縦士となります。
 ステージ1というかステージ0というか、まずは離陸から始まって空に向かってまっしぐら。どんな素人でもちょっとした技術や知識があれば、ひとまず誰でも実際の航空機を飛ばす事は可能でしょう。
 ただし問題はここから。『飛んだからには降りるしかない』というのがこのゲームのメイン。限られた空路、限られた着陸場所、限られた滑走路距離は当然ですが、ここに自然の脅威が加わります。雨、雲、風、時間…。
 日々を過ごす時間の中では意識しなければ気にもならない存在かも知れませんが、空中を移動する真っ最中の操縦士の視野からすれば、その全てが脅威であり猛威そのものです。だって、ミスしたら『墜落』の二文字に行き着きますからね。
 とりわけ印象に強いのは『風』。地上を歩けばちょっとしたそよ風かも知れませんが、支えの無い機体はそんなそよ風にすら流されてしまうのです。『何となく滑走路が斜めになってる…?』と思った頃にはもう手遅れ。ただでさえ進んでしまった距離と時間を取り戻す事は不可能であり、我々操縦士は一か八かの急旋回を試みる事に…。
 その後、高確率で出現するのは『GAME OVER』の文字。ああ良かった。そういえばゲームだったんだな。
 と、我に返って『墜落しちまったよ』と、外で見ていた仲間に報告。そして『人殺し』『ヘタクソ』『乗り物酔いするだろ』等々の温かいエールを受けて投入した100円の役割が終わるのでした。
 あーよかった。パイロットじゃなくて。
 …なんか変な紹介になりましたが、そんな感じのゲームでしたとさ。めでたしめでたし。
 ちなみに各ステージエンド時に減点方式による採点がなされる所も魅力的でして、ひとまず私は飛行士に向いていない事も同時に認識しました。

はなうたBGM

 当時のタイトーの本気を感じる一作で、それはゲーム内容もそうですが、BGMも本気そのものでした。
 テーマは『航空機』や『操縦』というよりも『空』とか『空の移動』みたいな感じになっており、一言にまとめちゃえば『爽やか』そのものですね。少なくとも日本人感覚で聞けば、ああ、空を飛んでいるっぽいな。みたいな感じに仕上がっているかと思われます。
 BGMはゲームの進行に合わせて編曲されているようなので、あくまで着陸手前までの短いものですが、ステージ導入時のBGMスタートから着陸一歩手前のBGMエンドのタイミングが絶妙です。BGMが終わって残る音といえば、機内音と管制からのメッセージのみで、『着陸』という名の緊張感をこの上なく高めてくれます。少なくとも私は高まりました。斜めになっちゃった世界を目の前にドキドキしていました。まあ、『もうダメだ』の気持ちの方が緊張感を遥かに上回っていましたがね。
 なんだか話が逸れましたが、耳にして気分の良くなるBGMという事は確かです。雲一つない晴れ渡った空に飛行機を見付けると、なんかこのゲームのBGMが再生されるんですよね。
 ただ、心残りがあって、このゲームは一定のステージごとにBGMが変わるようでした。運良く先のステージまで進めた時に聞き慣れないBGMを耳にしましたが、残念ながらヘッポコな操縦技術の私は片手に収まる回数しか聞いた事が無く覚えていないんですよね。

時代の先取り!………過ぎっ!!

 モノを作る人というのはどんな対象に対しても全力を尽くそうとしてますね。モノを作るだけあって、その辺はプロ。生半可な知識ではなかなかトライ出来ないでしょう。
 このトップランディング、コックピットの内部を一般層が知るためには、まず興味を持ち、自力で調べ上げるしか方法はありませんが、開発者の方も携わった人物が『元操縦士』でもない限り、きっと資料を漁ってコックピットを知り得たのではないでしょうか。画面下部のコックピットは簡素化されていますが、説明されなくとも実機の操縦においては非常に重要な計器類と言えるでしょう。
 ただ問題は『飛行機に興味を持つ人』は多くても、『飛行機内部に興味を持つ人』はそれほどでもない所かと思います。先にも触れましたが、私達はトップランディングの其の筺体を『飛行機』をは思わず『子供用の遊具』と思い込んでいたため、デモ画面を外部から観る事を知っていながらも、その先の興味というモノは全くありませんでした。時代背景から言わせれば完成度が高いからこそ、これは勿体無い事だと今更ながらに思えます。もっと異なる宣伝法を用いれば、また、タイトルをもっと分かり易くすればだいぶ印象が変わったのかも知れませんね。
 実際、後に発表された『電車でGO!』は非常に早い段階でその知名度を上げたわけですが、その要因は恐らく

『電車⇒身近な存在⇒興味を持ち易い⇒運転してみたいという願望を持ち易い』

 という流れから来たのではないでしょうか。そんなモノがゲームセンターにあれば、プレイヤーのほとんどは本物を運転した事は無いものの、お試し気分でやってみるかという行動に繋がるのは考えるに難しくありません。その操作が本物と比べて瓜二つかどうかは別にしても、もともと運転した事の無いプレイヤーにとってはそんなことは比較素材ではなく、『ごっこ遊び』にて純粋に電車の運転士になれるわけですから単純に楽しめた訳ですね。そこに実際の駅名や風景が取り入れられる事で臨場感を更に高めた出来に仕上がったのだろうと思います。
 今の話を『トップランディング』に置き換えれば、きっとこうでしょう。

『難しそう・英語が多い・空港名を言われても空からじゃピンとこない』
 まあ、他にも理由はあるのでしょうが、これが『電車でGO!』の後に発表されれば全てが反対になったのかも知れなかったのです。

『やり応えがありそう・英語アナウンスが本格的・空からの視点がリアル』
 みたいな感じに。まあ、個人的にですがね。

 トップランディング…、出来は本当に良いのですが、きっと生まれるのが早過ぎたんですね。繰り返しになりますが、『電車でGO!』がヒットし、その熱が冷めない段階で『電車の次は飛行機だ!』みたいなノリで発表されればかなり違う印象になったのかもしれません。
 あ、ちなみにこのトップランディング、飛行機繋がりという意味かどうかは分かりませんが、成田空港近くの航空博物館にありましたね。まあ、数年前の話でハンドルがややイカれていましたが…。
 なんか長くなってしまいました。目を通して頂きありがとうございました。
 

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