アカツビアンナイト
2話
チョロ松 | バイト初日を迎えてみたものの……。 この恰好、なんか恥ずかしいな。 |
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こう着慣れない感が強くて、 自分に似合ってない感じするし。 | |
しかも、なんで僕だけ 魔法のランプっぽいのを渡されたんだろう……。 | |
本物かもと思って確認してみたけど、 何にも起こらないただのランプだったし。 | |
アカツビア国との祭りだからって、 こんな恰好で働く意味があるのかな……。 浮かれ過ぎな気がするんだけど。 | |
トド松 | あ、はい。生ビール2つですねー。 |
いらっしゃいませ。 お2人様ですか? はい、それではお席にご案内いたします。 | |
え、可愛い?ほんとですか~? お姉さんも可愛いですよ。 | |
チョロ松 | なんであいつは あんなに堂々と出来てるんだろ。というか、 今、あいつ可愛いって言われてなかった!? |
トド松 | どうしたの、チョロ松兄さん? 働かないと店長に給料泥棒だって、 報告しちゃうよ? |
チョロ松 | それはやめてほしいかな。 よく普通にてきぱきと働けるね。 この恰好で。 |
トド松 | だって、こんなのただの制服でしょ。 気にするような事なくない? |
チョロ松 | そうだろうけどさ。 たまにトド松のそういうところ、感心するよ。 |
トド松 | むしろ、そっちを気にしてるチョロ松兄さんをボクは凄いなって思うよ……。 |
チョロ松 | ?どういう事? |
トド松 | だって、あれ見てよ、あれ! |
十四松 | ……。 |
トド松 | 店長が連れて来たのは知ってるけど、 なんで、そのまま居るの? というか、ずっと立ったままなんだけど!? |
チョロ松 | まぁ、確かに。 ずっと立ったまんまで気にはなるけど。 |
トド松 | でしょ!?なのに、チョロ松兄さんときたら 十四松兄さんより自分の恰好を気にしてたじゃん! なんで!? |
チョロ松 | トド松。あのさ、 前にも言ったと思うんだけど……。 |
十四松だよ? 謎が多すぎて兄弟の僕らが、 謎のままで良いっていう話になったろ? | |
トド松 | でも、それとこれは別で 気になってしょうがないんだけど。 |
チョロ松 | 気持ちは分かる。でも、 謎のままにしたほうが良いこともあるって 僕らは分かってるだろ。 |
トド松 | う、うん…。分かったよ。 ん……? |
チョロ松 | 言ってるそばから気にするなよ。 もういいだろ? |
トド松 | ち、ちがうよ。チョロ松兄さん……。 十四松兄さんって元々あの位置に居たっけ…? |
十四松 | ……。 |
チョロ松 | え、だって、ずっと立ってるだけなんでしょ? 動くわけないじゃないか。 |
トド松 | そうだよね、ボクの勘違いだよね。 うん、ごめん。気にしないで。 |
二時間後……。 | |
チョロ松 | ……? なんか変な感じがする。 |
トド松 | どうしたのさ、チョロ松兄さん。 |
チョロ松 | なんか、気のせいかもしれないんだけど、 この店内が変な感じする。 誰かに見られてるような。 |
トド松 | 急にキャラ変?しかも、エスパーに? それはちょっと遅すぎるんじゃない? |
あ、でも、バイト先だけ キャラ変えて働いてる人もいるし、 初日だから良いかもしれないね。 | |
チョロ松 | 兄弟で同じバイト先なのに キャラ変するわけないでしょ! って、そういうんじゃなくて! |
トド松もよく店の中見てよ。 なんか、数時間前と違わない? | |
トド松 | って、言われても。 店の中はアカツビアン国っぽい感じの 作りにしたって店長に聞いたし。 |
一番、違和感があるのは 十四松兄さんぐら……い!? | |
2人 | 十四松ってあんなところにいたっけ!? 十四松兄さんってあんなところにいたっけ!? |
トド松 | ねぇ、やっぱり動いてるよね!? |
チョロ松 | うん、ゆっくりだけど、あいつ動いてる! |
十四松 | …………。 |
トド松 | うわ目だけでこっち見てるよ……! すっごく怖いんだけど!? |
チョロ松 | おい、十四松!それ怖いから! 怖いから止めて!! |
十四松 | …………。 |
2人 | だから、じっと見てくるの止めてってば!!! |